SNSを通じた販売ビジネスは、日本でまだまだ馴染みが薄いかもしれません。ですが、先行してSNSでショッピング機能が提供されるようになった中国やアメリカでは社会現象になるほど爆発的な普及を遂げており、日本でもネットで稼ぐ方法の新しいビジネスチャンスとして期待が高まっています。
13歳から69歳までの男女1,500人を対象とした総務省の調査によると、平日は90分以上、休日は130分近くをSNSや動画投稿サイトの閲覧に時間を費やしていることも明らかとなっています。こうした状況を踏まえると、事業者は「SNSで商品を売るべきか」ではなく「どのSNSに力を入れるか」を考える必要があるといえるでしょう。そこでこの記事では、Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)、TikTok(ティックトック)、YouTube(ユーチューブ)、Pinterest(ピンタレスト)を活用したショップの開設や広告の運用、SNSマーケティングの方法について紹介します。
販売に適したSNSプラットフォームの選択

すべてのSNSに同じような販促効果があるわけではないため、ショップに適したプラットフォームを選ぶ必要があります。なかでもFacebook、Instagram、TikTok、Pinterest、YouTubeは、販売支援の仕組みが整っており、多くのユーザーに向けた販促活動がしやすいSNSといえます。
これらのSNSは全て、Shopify(ショッピファイ)との連携が可能です。オンラインストアとSNSをつなぐことで、販売に必要な情報を同期しながらマルチチャネルで商品を販売することができます。ここからは、それぞれのSNSがどのようにショップとして機能するか、ご紹介していきます。
なお、SNSのショッピング機能は最初にアメリカなどの海外で展開され、日本国内で使えるようになるまでに時間がかかる場合があります。一部の機能がまだ使えなかったとしても、今後展開される可能性があります。
Facebookでの販売方法
Facebookは、世界中で33億人以上が利用しているSNSです。長年にわたりSNSの代表的なプラットフォームとして存在感を示してきただけでなく、いち早くショッピング機能を本格的に取り入れた始めたサービスでもあります。Facebookには、ユーザーの興味や行動パターンに応じて細かく分類する仕組みがあるため、販売する側はきちんとターゲットを絞って商品を販売することができます。
Facebookを活用して商品を売る方法はいくつかあり、代表的な手段としては次の4つが挙げられます。
Facebookショップを開設する
Facebookショップとは、Facebookページ上で商品を掲載できる機能です。開設するには特定の条件を満たす必要がありますが、顧客はECサイトなどへアクセスしなおさなくても、商品の閲覧から購入までFacebook内で完結できるようになります。
Shopifyと連携している場合は、商品情報を同期するだけでショップの構築が可能になります。
土屋鞄のランドセルでは、ユーザーがFacebookショップに訪れたくなるように、販売している商品の写真や購入者の意見などをFacebookに投稿しています。

なお、2025年8月末をもって、Facebookショップの会計に関する一部の機能のサポートが終了するとMeta社が発表している点には留意しておきましょう。
直接購入できるFacebook投稿を作成する
商品をタグ付けした投稿を作成すると、見ている人がその場で商品情報を確認し、購入に進めるようになります。手順はシンプルで、1つの写真や動画に対して商品を最大5点まで関連付けることができます。
日本製バッグブランドのFUMIKODA(フミコダ)は、モデルが実際にバッグを着用している写真を投稿し、投稿内に商品タグを埋め込んで購入しやすくしています。

Facebookマーケットプレイスで販売する
Facebookマーケットプレイスは、ユーザー同士で売買を行うためのフリーマーケット機能です。直接受け渡しができるように、指定した地点から一定の距離内で出品されている商品に絞り込む機能などが特徴ですが、中古品だけでなく新品の販売も可能です。Facebookユーザーであればだれでも利用でき、販売手数料は不要となっています。
Facebook広告を掲載する
Facebook広告を掲載すれば、興味・年齢・居住地などの条件をもとに、関心を持ちそうなユーザーに絞り込んだPRが可能です。ニュースフィードやストーリーズ、Messenger(メッセンジャー)など、ユーザーが使っているさまざまな場所に広告を表示することができます。
Facebook広告は簡単に始めることができ、必要な準備はビジネス用のFacebookページを作成するだけです。その後、一括管理ツールであるMeta Business Suite(メタビジネススイート)を通じて、表示先の選択や成果の確認などを行えるようになります。
Instagramでの販売方法
写真や動画といったビジュアルでの訴求に強く、クリエイターにも親しまれているInstagramは、ショッピング機能がプラットフォーム上にシームレスに設計されている点が特長です。
Facebookと同様に、インスタで稼ぐ方法はいくつかあります。具体的には、以下のとおりです。
Instagramショップを開設する
Instagramでは、プロフィールにショップ機能を設け、アプリ内で商品を購入できるように設定できます。Facebookのショッピング機能と同様、Metaの管理ツール「コマースマネージャ」、あるいはShopifyで構築したオンラインストアを使って管理できます。
1969年からジーンズを作り続けている内田縫製では、店舗の様子や事業者の人柄が伝わる写真や文章を投稿することで商品に対する興味を持たせ、ショップへの誘導を促しています。

なお、Instagramショップを設定するにあたっては、まずInstagramビジネスアカウントを作成する必要があります。
直接購入できるInstagram投稿やストーリーズを作成する
Instagramショップを設定すると、アカウントの運営者やユーザーが投稿やストーリーズに商品にタグを付けられるようになります。視聴者はタグをタップすることで、その場で商品の価格や説明などを確認でき、外部サイトへ移動することなく購入へと進むことができます。
インフルエンサーやクリエイターとのコラボにも適しており、フォロワーが商品について投稿したり自発的にタグ付けすることで、拡散に協力してくれることもあります。
日本酒を使った化粧品を販売している菊正宗は、投稿した写真の中にタグを付け、商品に興味を持った視聴者がすぐに商品の金額などを確認できるように工夫しています。

Instagram広告を掲載する
Instagram広告は、Meta広告マネージャを通じて出稿できます。インスタフィードや検索タブ、ショップタブ、ストーリーズ、リールなど、さまざまな場所に広告を表示させることが可能です。
Facebook広告に類似する点も多く、Instagramと併用して広告を展開するのもよいでしょう。
TikTokでの販売方法
TikTok(ティックトック)は、ショート動画を軸に成長してきたSNSで、いまやFacebookやInstagram、YouTubeと肩を並べる存在になっています。日常性とエンタメ性を組み合わせたコンテンツがユーザーに支持されているため、商品の紹介においてもユニークなアプローチが求められます。うまく活用すれば、拡散力を生かして売上アップにつなげられる頼もしい手段となるでしょう。
TikTokで商品を売る方法には、次の4つがあります。
TikTokショップを開設する
TikTokショップを開設すると、アカウントのプロフィールから直接商品を紹介・販売できます。設定を完了させると、プロフィールに「ショップ」と書かれたアイコンが表示され、タップすると商品が一覧で表示される仕組みです。
水槽や関連商品を販売しているBiorium(ビオリウム)では、直近の動画でTikTok限定の大セールを実施すると打ち出し、配信機能を使って購入を促す取り組みを行っています。

LIVEショッピング広告を作成する
TikTokのライブコマース機能であるLIVEショッピングは、リアルタイムの動画配信と商品を即座に購入する機能を組み合わせています。視聴者は配信を見ながら、画面をスワイプして商品を確認し、すぐに購入することができます。
動画に商品リンクを追加する
商品リンクを動画に追加することで、投稿から商品ページへスムーズにつなげることが可能になります。Instagramのリールにおけるタグ付けと似たような機能で、ユーザーは動画を見ながら興味を持った商品をその場で確認でき、購入へと進むことができます。
インテリアや家具を販売しているLOWYA(ロウヤ)では、商品の便利さが伝わる動画に紹介している商品のリンクを追加し、詳細が気になったユーザーが情報をすぐに得られるようにしています。

TikTok広告を掲載する
プラットフォーム内での販売活動を強化するために、TikTok広告を実施しましょう。利用できる広告の種類は、次のとおりです。
- インフィード広告:通常の動画に自然になじむ形式で、ユーザーのタイムラインに表示される広告
- TopView(トップビュー)広告:アプリを起動した瞬間に表示される広告
- ダイナミックショーケース広告:ユーザーの関心に合わせて商品が自動で選ばれ、表示される広告
YouTubeでの販売方法
YouTubeは、動画を楽しむための場であると同時に、商品販売や収益化のチャンスを広げる場でもあります。視聴者の層が広く、コンテンツを通じて商品を紹介することができるため、販売チャネルのひとつとして注目されています。
YouTubeで販売活動を行うには、次のような方法があります。
動画内で商品を宣伝する
オンラインストアとチャンネルを連携させれば、YouTubeの動画内で商品を紹介することができます。
ショッピング機能を使うことで、以下の場所で商品の情報を掲載できるようになります。
- 動画の概要欄やコンテンツの下にある商品セクション
- 通常の動画コンテンツやショート動画、ライブ配信
- チャンネル内の「ストア」タブ
YouTube広告を掲載する
YouTubeでは、パートナープログラムを通じて広告収入を得られるだけでなく、自分でターゲット広告を設定して商品やブランドの認知を広げることもできます。広告は、視聴者の興味や行動履歴に合わせて表示されるため関心を引きやすく、購買や登録といった行動を促すきっかけにもなるでしょう。
Pinterestでの販売方法
Pinterestは、買い物の計画やアイデア探しを目的としたユーザーが多く集まるSNSです。日本国内でも、Pinterestユーザーの5人に3人がショッピング目的で利用しているというデータがあります。
商品を紹介する手段としては、Pinterest広告の掲載が効果的です。
Pinterest広告を掲載する
Pinterest広告には2つの形式があり、どちらも商品を際立たせて紹介したいときに適しています。
- ショッピングアド:ユーザーのタイムライン上に商品が表示され、価格や在庫状況などをあわせて伝えることができる
- コレクションアド:広告をタップすると複数の商品が一覧で表示され、興味のあるアイテムを見つけやすくなる
たとえば「コーヒー」と検索すると、関連する飲み物やグッズなどの広告が季節などを考慮して表示されます。

ソーシャルセリングとソーシャルコマースの違い
SNSを通じて販売を行なう場合、その手法は目的とアプローチのちがう「ソーシャルセリング」と「ソーシャルコマース」という2種類に分けることができます。
ソーシャルセリング
ソーシャルセリングは、SNSを通じて見込み客と関係を築くことに重点を置いた取り組みです。商品をすぐに売ることが目的ではなく、コンテンツに寄せられたコメントへの返信や有益な情報の発信、インフルエンサーとのやり取りを通じて、見込み客の信頼や関心を育てることが目的の中心となります。
たとえば、ファッションブランドのRIVE DROITE(リヴドロワ)は、週に数回Instagramライブを実施し、視聴者からのコメントに丁寧に答えながら商品を紹介しています。このような姿勢は、ターゲット層とのつながりを深め、結果として購入につながる流れを生み出しています。
ソーシャルコマース
ソーシャルコマースは、SNS上で完結する買い物体験を意味します。商品を見つけてから購入するまでの流れが、アプリ内でスムーズに進むように設計されており、ユーザーは外部サイトに移動する必要がありません。たとえば、Instagramのショッピング機能では、投稿にタグ付けされた商品をその場ですぐに購入できます。
このように、ソーシャルセリングとソーシャルコマースは、ユーザーの行動段階に応じて異なる役割を果たしています。ソーシャルセリングは信頼構築を目的とした関係づくり、ソーシャルコマースはユーザーがすぐに商品を購入できる環境づくりを、それぞれ目的としています。
まとめ
SNSをショップとして活用する手法は、今後もますます広まっていくビジネスとなるでしょう。人々が日常的に時間を費やすSNS内でブランドの存在感を示すことは、商品を販売するうえで重要になっていきます。
FacebookやInstagram、TikTokなどのプラットフォームを活用すれば、商品やサービスの紹介やショッピング機能の利用だけでなく、購入につながる広告の運用も可能です。ターゲット層にあわせた形で販売戦略を考えることで、よりよい成果につなげることができるでしょう。
SNSもっと活用しようと考えている方は、専門知識がなくても簡単にストアの立ち上げやアカウントの連携が可能なShopifyをご活用ください。無料体験も実施しています。
SNSでの販売に関するよくある質問
ソーシャルコマースとソーシャルセリングの違いは?
ソーシャルコマースは顧客との関係づくり、ソーシャルセリングは販売経路の効率化を目指す点で異なります。ソーシャルセリングは、SNSを通じて信頼関係を築くことを目的とした取り組みです。コメントへの返信や情報発信を通じて、ファンとのつながりを深めます。
一方のソーシャルコマースは、SNS上で買い物を完結できるようにする仕組みです。投稿から商品情報にアクセスしたり、アプリ内で購入まで進めたりできる機能が必要となります。
SNSで稼ぐ方法は?
- ターゲットを明確にする:誰に向けて販売するのかをはっきりさせ、ターゲットがどのSNSを活用しているのかをリサーチする
- 最適なプラットフォームを選ぶ:扱っている商品やサービスに合ったSNSを選ぶ
- 魅力的な投稿を作成する:視聴者の心に残るような内容を意識して、写真や動画を作成する
- 広告を活用する:より多くの人に見てもらうために、必要に応じて広告を活用する
- 結果を確認して改善する:反応を分析して、よりよい成果を得るためにコンテンツを改善する
- 視聴者とのやり取りを大切にする:コメントに返信するなどして、信頼関係を育んでいく
ショップを運営するのに最適なSNSは?
最適なSNSは、販売する商品やターゲットの属性によって異なります。考慮すべきプラットフォームとして、Facebook、Instagram、Twitter、Pinterest、YouTubeが挙げられます。
SNSがショップ運営に適している理由は?
SNSでショップの知名度を上げる方法は?
SNSに商品を投稿するためには?
- SNSに投稿したい商品を選び、画質のよい写真や動画を用意する
- 商品に対して興味が沸くようなキャプションを書き、必要に応じてハッシュタグをつけて投稿する
- 投稿についたコメントのチェックや返信を行う
- 投稿に関心を持ってくれた人と積極的にやり取りする
文:Yukihiro Kawata