ドロップシッピングは成長を続けているビジネスモデルで、世界市場は2033年までに2,000億ドルに達すると予測されています。ドロップシッピングがビジネスチャンスをもたらすことは明白ですが、ドロップシッピングで儲けるためのはっきりとした方法は明らかになっていません。
多くのドロップシッパーは売れる商品を見つけること、信頼できるサプライヤーと提携すること、そしてネットショップへのトラフィックを獲得することに苦労しています。そのため、ドロップシッピングで成功した起業家の事例は貴重な情報源となるでしょう。
そこでこの記事では、ドロップシッピングの成功例と、そこから見えてくる成功するためのコツを解説します。
ドロップシッピングの成功例
ドロップシッピングビジネスを始めることは、目まぐるしく変化する業界に参入することを意味します。毎月新しい競合や一歩先を行くための新たな戦略が登場するなかで、ドロップシッピング成功者がどのような工夫をしたのか見てみましょう。
成功例1:ニッチな商品を見つけて2か月で収益化

Tze Hing Chanは、タピオカミルクティーのぬいぐるみやその他の厳選されたかわいい商品を販売するドロップシッピングストアSubtle Asian Treatsを共同設立しました。パンデミック中に事業を開始し、わずか2か月で19,000ドル(約280万円/当時のレート、以下同じ)の利益を上げました。
しかし、彼はスタート当初から成功したわけではありません。スマホケースの販売から始め、試行錯誤したことが成功につながりました。
このドロップシッピングストアが成功した理由
トレンドのニッチを見つけた
Tzeは、アジアでタピオカミルクティーの人気が高まっていることを知っていたため、AliExpress(アリエクスプレス)で関連商品を探しました。最初はタピオカミルクティーをモチーフにしたスマホケースを販売し始めましたが、利益率は良くありませんでした。
その後、最も利益を見込める商品アイデアであるぬいぐるみを見つけ、タピオカミルクティーのぬいぐるみという、ドロップシッピングで売れるニッチを見つけることに成功しました。
プロフェッショナルなストアを作成した
Tzeは自社ストア作成にも注力しました。NikeやAdidasのようなサイトデザインを再現したいと考え、各商品写真を編集し、魅力的な商品説明を書きました。
顧客との信頼関係構築に努めた
顧客の購入プロセスでは、透明性を保つようにしました。自社の商品ページには配送時間や発送元などの配送ポリシーを明記し、顧客が購入から商品の受け取りまでの見通しを持てるようにしたのです。
また、FacebookやInstagramなどでフォロワーと交流し、関係も築きました。サポート対応を常に素早く行い、顧客が「詐欺サイトなのではないか」と不安を感じることがないよう努めました。
成功例2:Facebook広告を活用して効率的に販売

Cole Turnerは18歳のときにドロップシッピングを知って以来、eコマース事業で成長を続けています。2019年3月から2020年5月までには200万ドル(約3億円)以上の売り上げを達成しました。
Coleはまずさまざまな商品を試験販売し、最終的にジュエリーに目をつけました。その後すぐにFacebook広告を拡大し、ストアも雑貨店から一商品のみを取り扱う専門店に設計し直しました。専門店となったその店は、別のeコマース起業家に売却するまでに75,000ドル(約1,120万円)以上の売り上げを上げています。
事業売却後に立ち上げた3つ目のドロップシッピングストアは、わずか1年で210万ドル(約3.1億円)以上の売り上げを達成することができました。
このドロップシッピングストアが成功した理由
Facebook広告の最適化
Coleは主な販売チャネルとしてFacebook広告を使用しています。まず、販売する商品に興味がある2つのグループを特定し、それらのグループをターゲットとしたWeb広告を出稿します。十分なデータを集めたら、どのグループに広告が最も効果的だったかを分析し、効果のあるグループに対しての予算を増やします。
このようにFacebook広告をスケーリング(広告出稿規模を拡大するなどしてパフォーマンスを最大化すること)することで、効率的にターゲットにリーチしています。
企業ブランドが確立していた
競合他社と差別化して成功するには、企業ブランディングとユニークな販売提案が必要です。特に企業ブランディングは重要で、サプライヤーがどこであれ、信頼に足る企業だと顧客に感じてもらうために必要です。Coleのように事業を長く継続することで、顧客からの信頼を獲得しやすくなります。
丁寧な顧客サポートを行った
顧客との信頼を築く方法の一つは、優れたカスタマーサポートを提供することです。Coleは、懸念や質問が生じた際に顧客が連絡できる電話番号や対応可能な時間帯をサイトに明記しました。
営業時間中はすべての問い合わせに30分以内に回答して顧客の意見に耳を傾けることで、顧客は丁重に扱われていると感じ、購入につながりやすくなりました。
成功例3:エモーショナルマーケティングで差別化
Andreas KoenigとAlexander Peckaが最初にドロップシッピングを始めたとき、彼らの目標は1日あたり1,000ドル(約15万円)の売り上げを達成することでした。1年間試行錯誤した後、彼らはペット業界でニッチ市場を見つけ、2019年には月間50万ドル(約7460万円)の収益化に成功しました。
現在、AndreasとAlexanderはペットビジネスによって年間1,000万ドル(約15億円)以上を稼いでいます。
このドロップシッピングストアが成功した理由
顧客との感情的なつながりを重視した
ペットや子供など人々の感情に訴えかけるニッチ市場で、その感情を利用したエモーショナルマーケティングを行ったことで、同じような商品を扱う競合他社と差別化でき、売り上げにつなげることができました。
Facebook広告とオーガニックマーケティングを活用した
ビジネスの初期に広告とマーケティングの経験不足が原因で失敗したことを活かし、Facebook広告とオーガニック検索による流入により多くのエネルギーを注ぐことで成功を収めました。
時間とエネルギーを投資した
AndreasとAlexanderは、最初に失敗したときに諦めませんでした。オンラインでお金を稼ぐには、忍耐と継続的な学びが不可欠あることを理解し、試行錯誤をしながら事業を継続しました。多くの時間と労力をかけた結果、大きな収益になる商品を見つけることに成功しました。
成功例4:インフルエンサーマーケティングを活用

SarahとAudreyは、各々がドロップシッピングビジネスを始めた後、2019年に共同事業を開始しました。
成功したドロップシッピングの一般的な販売チャネルはFacebook広告ですが、彼女たちはインフルエンサーマーケティングに可能性を見出し、利益を上げることができました。
2人はブランドの米国市場への拡大に向けて、Instagramのインフルエンサーと協力してプロダクトプレイスメント(メディアへの商品露出)を行いました。その結果、わずか数週間で100万ドル(約1.5億円)以上の売り上げを上げました。
このドロップシッピングストアが成功した理由
適切なマーケティングチャネルの選定を行った
SarahとAudreyは、ターゲットオーディエンスと彼らが好むマーケティングチャネルを慎重に選びました。その結果、Instagramが最適だと判断し、インスタマーケティングに注力しました。
インフルエンサーの力を使った
インフルエンサーは、事業の成功に大きく貢献します。SarahとAudreyは、条件に完璧にマッチするインフルエンサーを見つけるため1日最大200通のメールを送りました。
このように、代理店を避けてインフルエンサーとの直接的な関係を築くのもコストを抑えることができるのでおすすめです。
インフルエンサーが得意なプラットフォームを使用した
インフルエンサーに案件を依頼するときは、彼らが一番フォロワーにリーチできるプラットフォームを使用してもらうようにします。SarahとAudreyの場合はInstagramのストーリーズが最も効果的と判断し、ストーリーズでプロダクトプレイスメントやプロモーションを行いました。
ドロップシッピングで成功する方法

1. 付加価値をつける
顧客にどのように付加価値を提供できるか、しっかりとした計画を持つことが成功の最も重要な要素です。
ドロップシッピングも含めた小売業では、提供するのは商品だけではありません。知見、情報、解決策などの付加価値を提供することで、ターゲットの信頼を獲得することができ、売り上げにつながるのです。
こういった付加価値を追加するためには、商品や市場、ターゲットの悩みなどに対する深い理解や知識が必要です。
質の高い情報提供など付加価値を提供できない場合、競争できるのは価格だけになります。価格競争は世界最大の米国小売企業Walmart(ウォルマート)を成功に導いた戦略ですが、ドロップシッピングビジネスの場合はこの戦略で成功するのは難しいでしょう。
2. マーケティングとSEOに注力する
通販サイトへトラフィックを誘導するのも有効です。少ない予算でビジネスを立ち上げる場合は、自分でSEO、マーケティング、バックリンクの獲得、ゲストポスティング(他社ウェブサイトに自社コンテンツを投稿し認知拡大を図ること)に取り組む必要があります。
これは、特に最初の1年間で重要になります。サイトを立ち上げた後は、少なくとも4〜6か月は75%の時間をマーケティング、SEO、およびトラフィックの獲得に費やす必要があるでしょう。
一度しっかりとしたマーケティング基盤を構築できれば、その後は作業時間を減らすことができるため、安定したトラフィックを獲得するまではマーケティングとSEO対策に注力しましょう。
マーケティングやSEOに詳しくない場合は、以下のリソースやブログなどを参考にしてみましょう。
SEOリソース
- Moz(モズ):オンラインで最も人気のあるSEOコミュニティの一つ。日本語非対応ですが、SEO関連用語がわかれば利用できるので日本でも多くのマーケターに利用されています。初心者向けSEOガイドは、特に始めたばかりの方には良いリソースになるでしょう。
- Search Engine Land(サーチエンジンランド):SEOに関するニュースなど最新情報を掲載する世界トップの検索情報サイト。毎日多数の新しい投稿があります。
- SEOBook(エスイーオーブック):人気SEOブログとSEO専門家向けの有料プライベートコミュニティを運営しています。
- 海外SEO情報ブログ:アメリカを中心に世界中の最新SEO情報を、日本語で読むことができます。
マーケティングリソース
- 僕らは言葉でできている:さまざまな企業のコピーを集めたサイト。効果的で魅力的なコピーライティングのヒントが得られます。
- IT Media(アイティーメディア):株式会社宣伝会議が運営。マーケティング、広告など業界の情報を幅広く展開しています。
- ferret(フェレット):業界の最新ニュース、インタビューも豊富に掲載しています。
eコマースマーケティングリソース
- Shopifyブログ:オンラインストアの効果的なプロモーションやマーケティングに関する包括的なeコマースブログ。高頻度に更新されています。
- ECのミカタ:「ネットショップ運営している人・企業のための」情報サイト。完全無料で幅広い情報を提供しています。
3. 専門化する
大多数の成功したドロップシッピングストアには共通点があります。それは、特定の商品に特化していることです。ストアが専門化すればするほど、成功する傾向が強くなります。
特定の商品に特化することで、専門性や権威性が高まって差別化が容易になり、プレミアム価格を設定するなど、市場内で優位に立ちやすくなります。また、マーケティング戦略も効率的に展開できます。
ドロップシッピング事業で一部商品に特化することは、ほとんどの場合不利になることはありません。顧客との取引経験を積みながら、最も収益性が高く、付加価値を提供できる商品を特定しましょう。たとえ高価格帯の商品であったとしても、コンバージョンが期待できます。
4. 長期的な視点を持つ
価値あるものを築き上げるにはそれなりの時間を要するものですが、ドロップシッピングビジネスの構築も同様で、長期の取り組みと継続した努力が必要です。平均的なフルタイムの収入と同程度の収益を生み出すには、少なくとも1年はかかります。
また、最初の数か月が最も難しいことを理解しておくことも重要です。予め心構えできていれば、ビジネスが成功するまで粘り強く続けられるでしょう。
5. 顧客体験を高める
顧客を満足させるのが、最良のマーケティング戦略です。顧客に良いサービスを提供すれば、口コミが広がり、他の人を紹介してくれる可能性も高くなります。最高の顧客体験を提供することで、リピート客が収益の大部分を生み出すビジネスを構築できるのです。
トラブル対応にも注意が必要です。ドロップシッピング事業者にとって最大のリスクは、フルフィルメントの問題です。トラブルが生じた際に利益と損失だけを見て、返送費用などの問題解決のためのコストを顧客に負担させないようにしましょう。
顧客体験を高めること、適切なカスタマーサポートを提供することを意識してトラブルに対応します。
6. 細部にこだわりすぎない
細部にこだわりすぎないようにしましょう。社名、ロゴ、テーマ、メールマーケティングだけで成功が決まるわけではありません。
ビジネスを成功させる要因は付加価値、マーケティング、優れた顧客サービス、専門化、長期的に取り組めるかどうかにかかっています。
新規の販売業者の場合、販売プラットフォームを選ぶのに時間を費やしてしまうかもしれませんが、それはビジネスの核となる部分のため、必要な時間です。よく調べて、十分な情報に基づいた決定を下しましょう。ただし、些細な判断の場合はあまり悩み過ぎないようにしましょう。
ドロップシッピング成功のための最も重要なステップ
ドロップシッピングで成功するために最も重要なステップは、実際にEC事業を立ち上げることです。
成功した起業家の多くも、成功する確固たる自信がなくてもまずはECサイトを構築して事業を始め、手探りで商品を探したり、失敗をくり返したりしながら成功につなげています。ドロップシッピングビジネスで成功したい人は、成功者と同じようにトライ&エラーをくり返しながら長期的な視点でEC事業を育てていきましょう。
Shopify(ショッピファイ)は手軽にプロフェッショナルなサイトを構築できるECプラットフォームです。ドロップシッピングもアプリなどで簡単に始めることができます。無料体験もできるため、一度試してみるのもおすすめです。
よくある質問
ドロップシッピングで成功するためのポイントは?
- 付加価値をつける
- マーケティングとSEOに注力する
- 専門化する
- 長期的な視点を持つ
- 顧客体験を高める
- 細部にこだわりすぎない
ドロップシッピングは利益がでる?
ドロップシッピングでは収益を上げることができます。平均的な利益率は15%~20%で、商品の在庫を抱えたり発送したりする必要がないため、低リスクで始められます。
ドロップシッピングが成功するまでどのくらいの時間がかかる?
ドロップシッピングが成功するまでには、数か月から1年以上かかります。ドロップシッピング成功例からわかるように、ほとんどのドロップシッパーは、ビジネスで成功するまでに別のストアをいくつか運営し、トライ&エラーをくり返しながら成功をつかんでいます。
最適なドロップシッピングのニッチ市場とは?
- 健康・ケア関連用品
- 衣類・アクセサリー
- キッチン・食料品
- インテリア・寝具
- オフィス用品
- 工具・リフォーム関連
- カメラ・スマホアクセサリー
- ゲーム
- カー用品
文:Miyuki Kakuishi